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[第34回]関係代名詞cui/日いづるところからフィレンツェへ①

ディーゼルエンジンのヤンマーについてのAGIの記事です。フィレンツェに支社を持っているんですね。Dal Sol Levante a Firenze la bellezza ispira l’ingegneria(日いづるところからフィレンツェへ 美が工学に息吹を吹き込む)というカッコいい見出しがついています。

La bellezza aiuta lo sviluppo di soluzioni innovative. Parole che suonano come una massima orientale. Che è divenuta realtà a Firenze, città scelta dieci anni fa come sede del centro di Ricerca e Sviluppo, unico in Europa, di Yanmar, multinazionale giapponese dell’ingegneria, la cui casa madre si trova ad Osaka, e che produce e commercializza motori diesel, macchinari industriali e agricoli nel mondo.

AGI, 26 febbraio 2021)

美しさが創造的解決の発展を助ける。東洋の格言のように響く言葉だ。この言葉がフィレンツェにおいて現実のものとなっている。同市は、日本のエンジニアリング多国籍企業であるヤンマーの、ヨーロッパでは唯一の、調査・発展センターの拠点(=YANMAR R&D Europe)として10年前に選ばれている。その親会社は大阪にあり、世界中でディーゼルモーター、産業用・農業用機械を製造・販売している。

 

今回取り上げるのは〈定冠詞+cui+名詞〉です!

上の引用文からポイントになるところだけ取り出します。

Yanmar, […], la cui casa madre si trova ad Osaka
ヤンマー[…]、その親会社は大阪にある

「英語でいうところの関係代名詞whoseか」みたいな浅いッシモな認識しかないのですが、どうしたらいいでしょうか。

 

今度こそ関係代名詞!

実は関係詞節を扱うのって第8回第11回第27回に続いて四回目ですね。第18回でも関係詞節のようで関係詞節でない従属節を扱いました。関係詞節を含む従属節はなかなかバリエーションも豊かで、細かく見ていくと面白いです。今回の用法についてはまさにその通りで、所有を表す関係代名詞ですよね。

第27回では、関係詞節を導入するcheが実は関係代名詞ではないということを見ました。今回は、この点についての補足を兼ねて関係詞節全体を見直してみたいと思います。まず何度か言及しているように、関係詞節というのは主節と従属節のどちらにも属している名詞句が存在しているというのがその特徴でしたね。この名詞句のことを先行詞と言うんでした。今回の文は主節に動詞がなかったりとちょっと複雑な構造をしていますが、先行詞Yanmar「ヤンマー」は主節の中にあるdiを中心とした前置詞句(di Yanmar)の一部であると同時に関係詞節における名詞casaの所有者ですね。

 

cheとcui/il qualeの使い分け

関係詞節を導入する要素には二種類あります。cheとcui/il qualeですね。二種類のどちらが使われるかは、先行詞が従属節において持っている役割によって決まります。具体的には、主語あるいは直接目的語の場合にはcheが、その他の場合にはcuiまたはil qualeが使われます。主語と直接目的語には前置詞がつかず、その他の場合には必ず前置詞がつくので、要するにこれら二種類の要素の選択は前置詞の有無で決まっているのですね。第27回ではこの観察をキーに、これらが文の中での役割によって(たとえば主語ioに対して直接目的語mi/meのように)形を変える代名詞だとは考えづらいことを見ました。

じゃあ、関係詞節を導入する要素が変わる時に実際には何が起こっているんでしょうか?

まず、先行詞というのは必ず名詞句です。先行詞になっている名詞句は主節において、今回のdi Yanmarのようにさらに別の句(今回の文なら、前置詞句)の一部をなしていることがありますが、関係詞節がかかっているのはYanmarにであってdi Yanmarにではないですよね。関係詞節というのは、どんな時も「名詞句(先行詞)+それにかかる関係詞節」でできています。

関係詞節の中身を見てみると、先行詞になっている名詞句は主語・直接目的語・間接目的語など、どんな役割でも持てます。ここで思い出したいのですが、別に関係詞節に限らず、文における名詞句は二種類の現れ方をしますよね。具体的には、名詞句だけが現れる場合と、前置詞を伴って前置詞句の一部をなしている場合です。この前者は要するに主語または直接目的語になっている場合で、後者はそれ以外の場合ですね。

 

こうして考えてみると、先行詞が関係詞節の主語または直接目的語になっている場合というのは、要するに先行詞が主節と従属節のどちらでも単体の名詞句で、全く同一であるケースなのです。一方、それ以外の場合は、主節では名詞句である先行詞に対して関係詞節では前置詞をつけてその役割が明示されているケースですね。前者のケースでは同一であるために単純に関係詞節において先行詞を消去して、「以下従属節ですよ」ということを示すためにcheをぽんと置いておくのだと考えられるわけです。これに対して後者のケースでは先行詞が関係詞節において持っている役割を前置詞によって示す必要があるために、前置詞のいわば「受け皿」として関係代名詞cuiまたはil qualeが必要なわけですね

さて、関係代名詞cuiとil qualeは基本的には同じ使い方をするのですが、ごく一部にどちらかにしかない用法があったりします。今回の文のような所有の用法はその典型例で、前置詞なしで現れて実質的には所有形容詞のような使われ方をする(la sua casa madre)、cuiに特有のものですね。il qualeにしかない用法もあるので、よければ考えてみてください。

 

[+α]フィレンツェのマーブル紙とネコの気まぐれ

私(田中)は大学時代に半年ほどシエナの語学学校に通っていたので、フィレンツェは何度か行きました。言うまでもなく見どころ満載の街で、ここでその魅力をお伝えするなんてことは不可能ですが、そのうちの一つに、職人の手によるマーブル紙というのがありましたね。その手の店で、きれいな便せんなどと一緒に、ネコの絵をあしらったしおりを買いました。

かわいいネコの絵の下に、飾り文字で

Qui mi addormentai

と書いてあるんですよね。しゃれてますよね。……ええ、もちろん、その画像をここに載せたかったんですよ。普段から愛用しているし。でも、見つからないんですよね。昨日からずっと探しているんだけど、ない。そういうものです。ネコの気まぐれのせいということにしておきましょう。(田中)

 

Photo by Ilya Orehov on Unsplash

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