Grammatica+  上級へのイタリア語

[第11回]接続法もやる時はやる/キッズYouTuberはジャンクフードを食べる②

(2022/2/18改訂)

子供の人気YouTuberが動画内でジャンクフードを食べることが、視聴者の子供たちの食生活に悪影響を与えかねない、という記事の続きで、子供にとって明らかに有害であるとなれば、何らかの規制が必要だという話をしています。

[…]YouTube invita i piccoli utenti a usare l’app Kids dove non ci sono contenuti dannosi. Ma i nativi digitali non hanno problemi a trovare i contenuti più visualizzati e rischiare così di finire sotto l’influsso pericoloso dei kidfluencer. “Servono regolamenti che affrontino in modo più adeguato i cibi non salutari promossi da influencer bambini” concludono i ricercatori.

Rai News, 08 dicembre 2020)

[訳]YouTubeは年少のユーザーには、有害なコンテンツが含まれないアプリ「(YouTube) Kids」の利用を勧めている。しかし、デジタルネイティブ世代にとって視聴数の最も多いコンテンツを見つけるのはわけもないことで、したがって「キッドフルエンサー」たちの危険な影響を受けることになりかねない。「子供のインフルエンサーたちが宣伝する健康的でない食べ物により適切な形で対処する規制が必要である」と研究者たちは締めくくっている。

 

読んでいて「あれ?」と思ったのが

最後の一文、Servono regolamenti che affrontino…で唐突に出てくる接続法(affrontino)です。主節の動詞servireが従属節に接続法を導くなんて話も聞いたことないし……。おそらくは唐突でも何でもなくちゃんとした理由があるのだと思います。土肥くんに聞いてみましょう。

 

接続法もやる時はやる

接続法というのは特定の表現の後に出てくるのね、楽勝!と思っているとこういうケースが出てきて戸惑うんですよね。結論から言うと、接続法は関係詞節において直説法と交替して、その関係詞節が修飾する名詞(ここではregolamentiですね)が特定されていないことを示します。要するに、書き手は特定の規制を想定しているわけではなくて、不特定の、これから作られるべき何かしらの規制を想定しているわけですね。このことがもうちょっとわかりやすい例文を見てみます。

(1) Cerco un’interprete che conosca bene cinese e coreano. https://www.treccani.it/enciclopedia/frasi-relative_(Enciclopedia-dell%27Italiano)/

(2) Cerco un’interprete che conosce bene cinese e coreano.

上の例文では、(1)のようにconoscereが接続法だと「中国語と韓国語が堪能な(存在するかどうかはわからない)通訳を探している」という意味です。直説法の場合(2)にも同じ意味を表すことができるのですが、同時に「中国語と韓国語が堪能な、とある(具体的な)通訳のことを探している」という意味を表すこともできるのです。今回の文における関係詞節は、前者に対応しているのですね。

さて、今回と同様に接続法を扱った第5回では、prima cheから始まる節において、接続法がもはやニュアンスを付け加えることがないということを見ました。このことと密接に関連しているのが、この節では接続法の使用が義務的であることでしたね。

ここでは接続法が「パラダイムをなしている」

ある形を使うことによって特定のニュアンスを付け加えるという現象を、もうちょっと詳しく見てみます。第5回でも述べたように、日本語のネイティブスピーカーが「明日は雪が降るだろう」と言うとき、この話し手は「明日、雪が降るに違いない」とか「明日、雪が降るかも」とかいった可能な形の中から、「だろう」という形を選んでいるわけですよね。このことを、これらの文末表現はパラダイム(paradigma)をなしていると言います。つまりパラダイムというのは、実際に発話される文に同時に現れることのない、しかし相互に関連している一連の要素のことですね。たとえばイタリア語では、動詞の活用語尾(-o, -i, -a…)は典型的なパラダイムです。

上の雪の例で話し手は「だろう」を選ぶことで文を自身の推測として提示していて、その結果として様々なコミュニケーション上の効果、すなわちニュアンスが発生する(たとえば、間違っているかもしれないと聞き手が了解する)わけですが、これが成立するのは話し手と聞き手がどちらもこのパラダイムの存在を知っているからです。一方でイタリア語における接続法は、ほとんどの従属節において唯一の選択肢なのだから、パラダイムをなしていません。単体でニュアンスを付け加える機能がないというのは、もはやパラダイムをなしていないことの結果なのですね。

さて、今回の文に戻ると、関係詞節における接続法は直説法と交替することができます。つまり、例外的に接続法がきちんとパラダイムをなしているケースなのです。その結果として接続法は単体でニュアンスを付け加える機能を持ち、直説法を用いた場合とは異なる意味を持つ文を作っているというわけです。当然、われわれ学習者がイタリア語を使う場合にも、気を遣わないといけないポイントですね。

ちなみに、接続法はなぜこんなに特殊な文法事項なんでしょうか? 実は、かつては接続法もほとんどの場合において直説法とパラダイムをなしてニュアンスを付け加える機能を持っていたようです。言語というのは時間と共に変化するわけですが、その間にこうした機能を失ってしまったのですね。

 

[+α]イタリアのYouTuber

日本と同様にイタリアでもYouTuberの存在感はかなり大きいわけですが、それなりに人気のあるグループを二つ紹介したいと思います。

一つ目はThe Jackal。イタリアがロックダウンされていた2020年3月にアップされた下の動画で見たという方もいるのではないでしょうか。普段はコメディ動画を上げているグループです。

 

もう一つはCasa Suraceです。こちらもコメディ動画を上げているグループで、南イタリアに拠点を置いていて(これはThe Jackalもそうですが)南北ネタが多めです。特に南イタリアの料理にフォーカスしたシリーズが好きです。更新してほしい。(土肥)(https://www.youtube.com/playlist?list=PLAJ1ZtQ6X5QKBm0v1andpcmL0qqhpu2fX

 

 

引用箇所の語句と訳

[…]YouTube invita i piccoli utenti a usare l’app Kids dove non ci sono contenuti dannosi. Ma i nativi digitali non hanno problemi a trovare i contenuti più visualizzati e rischiare così di finire sotto l’influsso pericoloso dei kidfluencer. “Servono regolamenti che in modo più adeguato i cibi non salutari promossi da influencer bambini” concludono i ricercatori.

[語句]dannoso: 有害な/nativo digitale: デジタルネイティブ/visualizzare: ~を視聴する/rischiare di+不定詞: ~しかねない/affrontare: ~に対処する

[訳]本文参照

 

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