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[第72回]未来形とは?(時制シリーズ)/ドラギ首相辞任、9月に総選挙

もう1カ月近くも前になってしまいますが、イタリアではドラギ首相が辞任し、大連立政権が崩壊することに。これを受け、9月に総選挙が実施されることになったのですが、なんと、イタリアで秋に総選挙が行われるのは100年超ぶりとのこと。

決定された選挙日程を報じるレプッブリカの記事を見てみましょう。

Le anticipazioni sono state confermate: le elezioni politiche per scegliere le Camere della 19ª legislatura si terranno il 25 settembre 2022, su una sola giornata, presumibilmente dalle 7 alle 23.

Per la prima volta della storia repubblicana quindi si avrà – invece del classico “governo balneare” – una campagna elettorale sui bagnasciuga, con le febbrili giornate per definire le liste e le alleanze a cavallo di Ferragosto.

(21 Luglio 2022, La Repubblica

予想されていたことが、事実であることが確認された。第18回議会の議員を選出する選挙は2022年9月25日に実施されることになる。選挙日は1日のみで、(投票時間は)恐らく7時から23時までとなる。

したがって、イタリア史上初めて ― 従来のように「水浴び政府(暫定政府)」を置く代わりに ― 波打ち際で(=夏の終わりに)選挙運動をすることになる。フェラゴストにもまたがる炎天の日々の中で、議員の名簿や同盟を決定することになる。

マーカーを引いた2カ所は未来形です。実はこのブログでは、未来形をメインテーマとして取り上げたことはありませんでした。ここではシンプルに未来のことを表すのに使われていますね。さて、イタリア文法の専門家に「未来形とは何ですか?」と質問した場合、どのような答えが返ってくるのでしょうか?(むちゃぶりオブザイヤー)

 

「時」の奥深さ

こういう直球のテーマはあんまりこのブログではやってきませんでしたが、しっかり見ていくと色んな関連する論点が出てきて面白いんですよね。半過去を扱った第54回第56回や遠過去の第38回に続いて、時制シリーズという感じでしょうか。今回はとりあえず、イタリア語の未来形について基本的なところを概観してみたいと思います。

 

まず形の話をすると、イタリア語の未来形は不定詞+avereの直説法現在からできていますね。amerò, amerai, amerà…と見ていくと、実は語尾にavere(が縮まったもの)が隠れていることがわかります。語尾によって示される活用なので、未来形は第38回にも出てきた統合的(sintetico)な形ですね。ちなみに実はロマンス語の未来形は統合的な形と分析的(analitico)な形が共存しているのが特徴です。フランス語やスペイン語を勉強したことがある方は、「行く」という動詞(仏aller、西ir)を使った未来を表す形を習ったと思います。

一応、イタリア語でもandare a+不定詞で未来のことを表す用法があります。といってもこれはまあ、聞かないこともないですがほとんど使われないですね。andare a〜は、物理的に「〜しに行く」という意味になることの方が多いです。フランス語やスペイン語のように、動詞が持つ活用の一部であるとは言いがたいですね。

使い方についてはどうでしょうか。未来形なんだから、「未来のことを表します」で終わり!という気もしますが、このブログを読むような人なら、どうやらそこまで単純ではなさそうだということを薄々感じているのではないでしょうか。というのも、イタリア語って直説法現在が問題なく未来のことを表せるんですよね。特に「その後」とか「明日」とかいった未来の話であることがわかる表現がある場合、現在形の方が自然な場合すらあると言われています。しかも未来形は、実は時間としては現在のことを表すこともできますよね。次の文のようなケースです。

Saranno le sette.

(今)7時だろう。

教科書なんかでは推測するために使われるとか言われるやつですね。こういう使い方はよく、「モーダルな」(modale)用法だと言われます。モーダルなというのは、第13回にも出てきたモダリティと関わる、という意味ですね。要するに、何かを描写するためというよりはニュアンスを付け加えるために未来形を使っているということです。こういう用法でそのまま使えるのは主に上のessereや他にはstareのような状態を表す動詞で、他の動詞だと次のように、今現在のことを表していると明示したほうがいいと言われていますね。

Dove passeggerà Piero in questo momento?

ピエロは今どこを散歩しているんだろう? (Salvi & Vanelli 2002: 117)

未来形がモーダルな用法を担っているのは、第11回の最後にもちらっと書いた通り、ラテン語からイタリア語へ変化していく過程で接続法がその機能を失っていったことと関係しています。ものすごく大雑把にいうと、接続法がこの手のモーダルな用法を持っていたところに、ラテン語にはなかった条件法がそのほとんどを引き受ける形で取って代わったのですが、同時に一部は未来形に受け継がれたんですね。こうした推測の用法は、接続法の領域だったものの一部なのです。

ちなみに未来形の用法としては、実はモーダルなものの方が純粋な時間としての未来を表す用法よりも古いです。といっても、大元は推測ではなく義務を表していたようです。今でも、未来形はある種の命令をするために使われますね。未来を表すために使われるようになったのには、「未来」というものの一般的性質も関係していそうですよね。未来というのは、その性質からいって必ず不確定です。推測だとか義務といった、主観的な内容と結びつきやすい時制なのだと言えそうです。

 

[+α]議会解散はなぜ? 選挙はいつ?

マリオ・ドラギ氏は、左派・右派政党のどちらも含む大連立内閣を率いてきましたが、就任から約1年半での辞任となりました。解散のきっかけとなったのは7月14日、政府が提出したインフレ対策の採決を連立与党の「五つ星運動」が拒否したこと。この時点で一度ドラギ首相はマッタレッラ大統領に辞意を申し出ていましたが、その際は大統領に慰留されていました。

しかし、20日に行われた内閣の信任投票で、「五つ星運動」「フォルツァ・イタリア」「同盟」の3党が棄権。これを受けドラギ氏は改めて辞意を固め、今度は大統領もこれを認めました。

来年の議会任期満了に伴って行われる予定だった総選挙が前倒しとなり、上で引用したように、9月25日に行われることになりました。

注目を集めているのが、現在政党支持率でトップの「イタリアの同胞」(現在は野党)、そしてその党首であるジョルジャ・メローニ氏です。早くも「イタリア初の女性首相誕生なるか」と国内外で騒がれています。おそらく、メローニ氏については今後このブログで取り上げることがあるような気がするので、詳しくはそのときのためにとっておきますね(=そのときまでに勉強しておきます)。(田中)

 

 

 

 

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