Grammatica+  上級へのイタリア語

[第78回]「現在分詞」のモヤモヤ感/イタリアの大学「専攻別 ストレートに卒業する割合」

今回は、イタリアの大学に関する記事から。イタリア(を含む欧州の多く)では、通常3年で学位を取得するシステムになっていますが、実態としては、卒業するまでにそれ以上要することが多いようですね。この記事では、どういった学部・専攻で学位取得までに標準以上に時間がかかることが多いのか、そして、学部・専攻ごとに成績の平均値はどのように異なるのか、ということがまとめられています。

LE LAUREE QUINQUENNALI

Discorso diverso riguarda le cosiddette lauree quinquennali, dove gli studenti costruiscono sin dal primo esame la loro carriera universitaria, a differenza di coloro che seguono lauree triennali e poi una successiva laurea magistrale. Per studenti come quelli di Medicina o Giurisprudenza le difficoltà sono molto maggiori: solo poco più della metà (51,7%) conclude “in corso”

Sky TG24, 12 Nov 2023)

5年制学位

いわゆる「5年制学位」に関しては話が違ってくる。5年制学位では、学生は一番最初の試験から大学のキャリアを組み立てていくこととなり、これは、まず3年制で学位取得を目指し、それから、(学部で学んだことに)連続する修士号を目指すものとは異なる。医学や法学を専攻する学生にとって困難はさらに大きなものとなる。半数をわずかに超える数(51.7%)の学生しか「予定通り」に学位を取得できていない。

(田中)studentiというごく基本的な語にマーカーを引きました。ここ最近、ジェルンディオや分詞を扱う中で、「現在分詞」という言葉が散発的に登場していました。過去分詞やジェルンディオはよく見かけますが、現在分詞はそれほど頻繁に出現しないですよね。

そこで、マニアックなテーマを扱うこのブログにまさにふさわしいように感じるのですが、あえてstudenteから現在分詞に切り込みたいと思います。これは実は、土肥くんから「studenteなどから現在分詞の話ができるかも」という前振りをもらっていたのです。面白いですね、というのは、studenteはstudiareの現在分詞、というわけではもちろんありませんね?

 

(土肥)そうでもあるような、そうでもないような

Studenteという語はラテン語の現在分詞からそのまま受け継がれた語で、-ante/enteをつけて作られるイタリア語の現在分詞studianteと形が違うのもそのせいですね。他によく見る現在分詞(由来の言葉)というと、名詞ならparlante「話者」とかpresidente「大統領」、ente「法人」、形容詞ならaccogliente「心地よい」、abbondante「豊富な」などでしょうか。

Studenteを含めて、これらの例が現在分詞だと言われると「まあ、言われてみれば…」という、なんだかモヤモヤした感じがします。だいいち、イタリア語の現在分詞ってとにかく影が薄いんですよね。現在分詞と言われたときにぱっと思い浮かぶような、現在進行形だとか分詞構文みたいな用法は、ジェルンディオが担っています。

現在分詞は、こうやって動詞から派生した名詞や形容詞を作るのが主な使い方です。一応、次のように目的語を伴って関係詞節っぽい従属節を作ることがあるのですが、かなり文語的であんまりお目にかかることはありません。

Una signora amante la musica

「音楽を愛する婦人」

(https://www.treccani.it/enciclopedia/participio_(Enciclopedia-dell’Italiano)/#)

さて、そうすると、もっと根本的な疑問が浮かんできます。そもそも、この「-ante/ente形」を現在分詞と呼ぶことは、どの程度適当なんでしょうか?

「分詞」participioという名称は、動詞と名詞・形容詞どっちのカテゴリーにも参加partecipareしている、要するにどちらの特徴も併せ持っているところからきています。-ante/ente形が名詞や形容詞の特徴を持っていることは明らかですが、動詞としての特徴についてはどうでしょうか。

動詞って、定法はもちろん、不定法でもavereだとかessereのような助動詞と結びついて文や節を作ることができます。このブログでも何度も、文というものを動詞を中心としたまとまりとして分析してきましたね。動詞は、文の主要部testaになることができます。こう考えると、そうした用法をほとんど持たない-ante/ente形は、動詞と密接な関係にありますが、もはや動詞から名詞・形容詞を作る手段でしかなくなりつつあると言えそうです。-ante/-enteという語尾は、動詞から「〜する人」という名詞を作る-tore/triceという接尾辞と同じような役割なわけですね。

そうすると、実はイタリア語の現在分詞というのは、単にラテン語の現在分詞を受け継いだ形であるということを表しているに過ぎず、機能に言及した用語なのではないんですね。一方で、「ジェルンディオ」みたいなそれだけ聞いても意味不明な言葉と違って、ふつう我々は「現在分詞」と聞くと、形容詞としてのものだけでなく進行形だとか分詞構文といった機能と結びつけて理解しがちで、これがイタリア語の用語法へのモヤモヤ感と結びついていそうですね。

といっても、そもそも現在分詞という用語を特定の機能と結びつけて理解してしまうのは、しばしば暗黙のうちに英語の文法を念頭においているからですよね。英語とイタリア語は別の体系を持つ別の言語だし、英語の現在分詞とぴったり一致するような形は、いずれにせよイタリア語にはありません。イタリア語の用語法を見てみると、少なくとも動詞の不定法に関しては「ラテン語で対応する形の用語を使う」という、わかりやすくて首尾一貫した方針です。ジェルンディオの回(第26回)で見た通り、ラテン語からイタリア語へ変化するにあたって不定法の機能はかなり様変わりしてしまっていて、これはこれで問題がないわけではないですが。

ちなみに、同様に英文法を意識してか、よく「ジェルンディオを現在分詞と呼ぶべき」という意見を見かけます。今回の内容を踏まえると、これは-ante/ente形を現在分詞と呼ぶ以上におかしなことになってしまいますね。ジェルンディオは、節を作る動詞としての機能しか持たず、したがって-ante/ente形と同様に「分詞」とは言いがたいからです。しかもラテン語の現在分詞を受け継いでいるわけですらなく、機能と形のどちらにも対応していない用語になってしまいます。やっぱり、素直に「ジェルンディオ」と呼ぶことにしたのは英断ですね。

 

[+α]「ストレートに卒業する」難しさ

今回引用した記事は、イタリアの大学において「ストレートに卒業する」難易度、あるいは成績が学部によってどう異なるのかを調べ、まとめたものでした。イタリアの大学への進学を検討している人には大いに参考になりそうです。
ところで、私(田中)は東京外国語大学のイタリア語科で学んだのですが、まわりで最も多かったのは、こちらの大学で3年学んだ後、1年間イタリアの大学に留学し、帰国してもう1年間こちらの大学に通って卒業する、というパターンだったように記憶しています。つまり、足掛け5年かかるわけですが、これが主流だったことは今振り返るとすごいことだなと思います(主に経済的な意味で)。コロナ禍や円安の影響を受けている現在はどうなっているのでしょうね。気になるところです。
ところでそもそも、イタリア(だけではありませんが)は日本とは異なり、通常の大学課程が(4年制でなく)3年制ですね。イタリアの大学の教育システムについては、イタリア留学総合サイト「Study in Italy」の以下のページにわかりやすくまとめられているのを見つけました。ご参考までに。(田中)
https://studyinitaly.jp/schools/universities/italian-university-system/

 

 

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