Grammatica+  上級へのイタリア語

[第67回]「進行形」は用法が拡大している/スーパーグリーンパス導入

今回は、イタリアで12月6日から導入されている新たなワクチンパスポート、「スーパーグリーンパス」について取り上げます。これまでの「グリーンパス」は、48時間以内の陰性証明があれば取得可能でしたが、新たに導入されたこのスーパーグリーンパスは、ワクチン接種者またはコロナに感染して回復した者が得られる、ワンランク上の証明書です。今後はこれを持っていないと入れない場所・できないことが増える、ということになるそうです(もう始まっているわけですが)。

これは通学・通勤の輸送機関にも適用されるそうで、となると、ワクチンをまだ受けていない児童・生徒は学校に行けないのか、という問題が出てきます。そこで…というところから記事を読んでいきましょう。

Il governo sta lavorando per trovare una soluzione e una delle ipotesi è quella di consentire a tutti i 12-18enni di avere il tampone gratis purché abbiano fatto la prima dose.

ANSA, 06 dicembre 2021)

政府は解決策を模索しており、その案の1つとして挙がっているのは、12歳から18歳の全員を対象に、一度目の接種を受けている場合に限り、無料でPCR検査を受けられるようにする、というものだ。

*tampone: tampone molecolare(スワブ検体による分子検査)のこと。tamponeは「綿・ガーゼ」のことで、検査時に鼻から検体を採取するのにこれを使うことから。

 

さて、マーカーを引いたのは〈stare+ジェルンディオ〉の形、つまり進行形ですね。ここでは「政府は…努めている・取り組んでいる」くらいの意味でしょうか。

 

意味はその通りです!

こういう形のことを、イタリア語ではperifrasi progressivaと言います。perifrasiは「迂言形」と訳されることもある用語で、要するに二つ以上の言葉から出来ている形のことです。今回の文でも、活用したstareとジェルンディオの形になったlavorareから出来ていて、二つ合わせて進行形の意味を表していますね。progressivaは、進行形のことですね。「迂言的進行形」といったところでしょうか。ちなみに、avereまたはessere+過去分詞でできた近過去なんかも、perifrasiの一種ですね。

同じようにジェルンディオとあわせて迂言形を作るものに、andareやvenireがありますね。これらとstareによるものを合わせて、perifrasi aspettualeと呼ぶことがあります。「アスペクトを表す迂言形」といったところでしょうか。このことからわかるように、stare+ジェルンディオの進行形を理解するためには、アスペクトという観点が重要であるように思います。

 

アスペクトに関しては、第54回で扱いましたね。動詞が描写する出来事が時間の広がりの中でどう提示されるかに関わっているんでした。今回のような現在進行形に関しては、今現在(第6回にも出てきた、発話の時点)に注目して、「〜に努める・取り組む」というある程度の時間的広がりを持って展開する出来事がまさに進行中であることを表現しているわけですね。このことから、stare+ジェルンディオの進行形は第54回でも出てきた未完了のアスペクトを表す形の一つです。進行形が表すようなアスペクトを、未完了のアスペクトの中でも特に進行のアスペクト(aspetto progressivo)と呼んだりします。

 

用法が拡大する「現在進行形」

ところで、特に第二次世界大戦後くらいを境目にして、イタリア語ではこの現在進行形の用法が拡大していると言われています。これはつまり、よく使われるようになっているということですね。具体的には、使われる頻度が上がっているだけでなく、それまで普通は進行形にすることがなかった動詞も進行形にされるようになってきているようです。

これがどういうことかを理解するためには、進行形というのはどんな動詞とでも使われるわけではないということを知る必要があります。上にも書いたように、進行形は未完了のアスペクトを表す形で、未完了のアスペクトはある程度の時間的広がりを持って展開する出来事がある時点で進行中であることを表現しているんでしたね。でも、動詞が表す出来事は時間的広がりを持っているとは限りません。たとえば、diventare「なる」という動詞が表す出来事は、その定義上、時間的な広がりを持ちませんよね。何かが何かに変化したその瞬間に起こり、完結する出来事です。こうした動詞は、本来未完了のアスペクトとは相性が悪いです。そもそも一瞬で完結するものであるために、その一瞬を取り出して展開している途中であると言う意味がないのですね。ところが、ここ一世紀くらいでこうした動詞がstare+ジェルンディオの形をとる頻度が飛躍的に上がっていると言われています。Squartini (1990: 183)にある、次の例を見てみましょう。

 

Era la droga dei ricchi. Ora sta diventando un’abitudine diffusa anche tra le classi medie.

それは富裕層にとっての麻薬のようなものだった。今や(それは)中流の人々にも普及した習慣となりつつある

 

こうした例が象徴するように、イタリア語におけるstare+ジェルンディオの進行形は今日ではかなり色々な動詞とともに見られる、よく見かける活用形の一つになっています。これは、「〜ている」を多用する日本語話者としては歓迎すべきことかもしれませんね。ちなみに、上の例文を報告したSquartiniをはじめとして、この現象は同じく進行形(be + -ing)を多用する英語からの影響であるとする説を唱える言語学者はそれなりにいます。一方で、英語からの影響はせいぜいイタリア語の内的な変化を後押ししたに過ぎないとする反論もあります。言語は絶えず変化するもので、その原因を一つに特定するのは専門家にも難しいものですね。興味がある方は、下に紹介する参考文献をぜひ読んでみてください。

 

今回の参考文献

Cortelazzo, Michele. 2007. “La Perifrasi Progressiva in Italiano è Un Anglicismo Sintattico?” In Studi in Onore Di Pier Vincenzo Mengaldo per I Suoi Settant’anni, edited by AA. VV., 1753–64. Firenze: Sismel.

Squartini, M. 1990. “Contributo per La Caratterizzazione Aspettuale Delle Perifrasi Italiane Andare + Gerundio, Stare + Gerundio, Venire + Gerundio. Uno Studio Diacronico.” Studi e Saggi Linguistici 30: 117–212.

 

[+α]スーパーグリーンパス導入

記事の導入で国光くんが解説してくれているように、今回のニュースのテーマにもなっているスーパーグリーンパスはグリーンパスの上位版で、要するにワクチン接種済みの人(と、一度感染して治った人)以外にもいわゆるPCR検査をして陰性であった人ならもらえていたグリーンパスから、検査で陰性になった人を除外したものですね。ちなみに、既にワクチン接種によってグリーンパスをもらっている僕(土肥)のような人は特に手続きは必要なく、全く同じグリーンパスがスーパーグリーンパスとして機能するので、あんまり実感はありません。

この措置の背景にあるのはもちろん、昨今のヨーロッパ全体での急激な感染再拡大です。イタリアに関しては爆発的な再拡大には至っていないのですが、やはり数字がじわじわと増え続けていること、そしてもちろん、既に始まっているクリスマスシーズンで人の動きが予想されることが導入の主な理由であるという認識です。同時にこれは、実質的なワクチンの義務化政策の一つですね。イタリアはこれまでも色々なやり方でワクチン接種を推し進めていて、実際に日本よりは低いもののかなり高い水準の摂取率を誇っています。そのおかげもあってか、状況は他のヨーロッパ諸国に比べれば落ち着いていますね。今回の措置は1月15日までですが、その後に緩和があるかどうかは感染状況の推移次第ですね。(土肥)

 

 

 

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