Grammatica+  上級へのイタリア語

[第4回]コロナ禍で若者に経済的打撃②/contare su

前回に引き続き「コロナ危機で娯楽・運動施設などが閉鎖されたことで、若者世代・契約社員が経済的に打撃を受けている」というla Repubblicaの記事。取り上げるのは締めくくりの1文です。

“Giovani, precari e a basso reddito”. Così i lavoratori nei settori colpiti dalle ultime chiusure imposte per contenere la diffusione del coronavirus, secondo un’indagine della Fondazione Studi dei Consulenti del lavoro. Su ristorazione, attività creative, artistiche e d’intrattenimento (cinema, teatri e via dicendo) e attività sportive (palestre, piscine) già il lockdown primaverile aveva picchiato duro. Ora, “i medesimi settori che più hanno sofferto per il lockdown di marzo e aprile rischiano di pagare un prezzo ancora più alto da un punto di vista lavorativo”. Per altro, non potendo contare su una situazione certo agiata di partenza, per la natura stessa dei rapporti di lavoro in questi settori.

la Repubblica, 30 Ottobre, 2020)

[訳]「若く、不安定(非正規)で、低収入」。これが、コロナウイルス感染拡大防止のために実施された前回のロックダウンで打撃を受けたセクターの労働者たちの特徴だという。Studi dei Consulenti del lavoro財団の調査によるもの。飲食業、創造的・芸術的・娯楽に関わる活動(映画館、劇場など)やスポーツ活動(ジム、プール)は、春に実施されたロックダウンですでに大きな打撃を被っていた。現在、「これら、3月および4月のロックダウンに際して(他の業界と比べて)より苦しんだ業界は、雇用面でさらなる代価を払うリスクにさらされている。一方で、……

見てすぐわかるようにこの文には述語動詞ありません。

というかですね、この文については「述語動詞がない」ということ以外何もわからない、というくらい意味がわからないんですよ、はっきり言って。完全にお手上げなので、全体的に土肥くんに丸投げします。

 

土肥篤が解説!

報道記事にはよくある、動詞が省略された文ですね。こういう文のことを名詞句発話(enunciato nominale)と言ったりします。名詞句発話について細かく扱うのはまたの機会に譲るとして、この記事のper altro以下は独立した文というより、実質的に前の文に付加されて説明を付け加えるジェルンディオ節であると理解してよさそうですね。すぐ前の文で「前回のロックダウンに苦しんだ業界は今回さらに苦しむことになるだろう」という趣旨のことを言ってるわけだけど、一方で(per altro)、これらの業界が苦しむのはそもそも(コロナ以前から)これらの業界における雇用のあり方が抱えていた問題のせいでもある…というふうに話を展開しているっぽいです。

語彙については、contare su〜は小学館の伊和中辞典では「〜をあてにする」という訳語があてられていて、この文脈ではいまいち解釈しづらいですね。そこで伊伊辞典(De MauroのIl dizionario della lingua italiana)をひいてみると、次のように書いてあります。

v. intr. (avere) fare affidamento, confidare in una persona a cui si attribuiscono determinate capacità, doti e virtù; confidare nelle doti e capacità della persona stessa.

大まかに訳すと「特定の能力や美徳を持っているものとして信頼する」ということで、「あてにする」という訳はこれをすっきりした日本語にしているわけですね。例文も見ておきます。次の文では、主語になっている人が例えば高い能力を持っているとか、あるいは口が固いとかいった特徴を持っているために、「あてにできる」人間であると述べているわけですね。

È una persona su cui si può contare.
(彼/彼女は)信頼するに足る人物だ。

問題の文に戻ると、non potendo contare su〜とあるので、この語が否定されて使われています。「特定の能力や美徳を持っているものとして信頼できない」、要するに「助けにならない」ということですね。誰が「助け」を得られないのかというと、文脈からいって前文のi medesimi settori「前回の封鎖に打撃を受けたセクター(の労働者たち)」でしょう。次に何が助けにならないのかを見てみます。suのあとにはuna situazione certo agiata di partenza とあって、これですね。certoはnonと共に副詞として使われたときに否定を強める働きがあって、ここでは「決して〜でない」くらいに訳しておけばよさそうです。前回の封鎖ですでに打撃を受けた業界にいる労働者たちとしては、そもそもの労働環境が良かったのであれば度重なる休業要請から受けるダメージもまだましだったのでしょうが、そうではないので、「さらなる打撃を受けてしまう」と言っているのですね。最後のper以下はそもそもの労働環境がよくない原因(業界における雇用関係のあり方)を述べています。

ちなみに、contareという動詞は英語でいうmatter「大切である」に対応しています。Black lives matterはLe vite dei neri contanoですね。

というわけで、引用文の下線を引いた箇所を日本語を訳すと、だいたい次のようになるでしょう。

Per altro, non potendo contare su una situazione certo agiata di partenza, per la natura stessa dei rapporti di lavoro in questi settori.

[語句]contare su: (特定の能力や美徳を持っているものとして)~を信頼する/agiato: 豊かな、余裕のある/di partenza: そもそも、初めから/rapporto di lavoro: 雇用関係

[訳]一方で、これらの業界における決して恵まれているとは言えない雇用のあり方にもその原因がありそうだ。

[+α]コロナ禍と若者の就職事情

イタリアにおける若者の就職難は有名ですが、コロナウイルスの感染拡大に伴って状況はさらに悪化しているようです。僕の友人の一人は観光業に携わっていましたが仕事が全くなくなり、住んでいた家も引き払って実家に帰らざるをえなくなりました。実はイタリアの失業率はむしろ下がっているのですが、これはそもそも就職活動をしていない人が増えているということのようです。実際、この友人は次の仕事を見つけられる見通しも立っていません。(土肥)

 

元記事URL:

https://www.repubblica.it/economia/2020/10/30/news/lavoro_settori_locdown_consulenti_del_lavoro-272268588/

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