Grammatica+  上級へのイタリア語

[第32回]troncamentoとelisione/イタリアの大学は「40%が世界の上位1000位に」①

さて、今回は「世界大学ランキング」の話です。世界大学ランキングと言えば、THE(Times Higher Education)が格付けするものなどが有名ですが、これらの各種ランキングをあるイタリアの委員会が分析した結果、「イタリアにはトップ100位に入る大学はないが、40%が上位1000位に入っており、これは世界で最も高い水準である」と発表しました。高等教育機関のあり方を考えるうえで、これは非常に興味深く、重要な分析だと思います。[+α]でもう少し補足することにして、まずは本日のメインテーマを見ていきます。

[…]l’Italia continua a non avere università tra le prime 100 in entrambi i ranking, ma anche nel 2020 posiziona nelle prime 500 e ancor di più nelle prime 1.000 con un numero di università confrontabile almeno con Francia, Germania e Cina.

AGI, 24 febbraio 2021)

[…]イタリアは前回に引き続きどちらのランキングでも上位100位に入る大学はなかったのと同時に、2020年は、少なくともフランス、ドイツ、中国には匹敵する大学数が上位500位にはランクインしており、上位1000位で見ればその数はもっと多い。

stima: 推定/affidabile: 信頼できる/individuare: 割り出す、突き止める/ateneo: 大学、高等研究機関/posizionare: 位置する

 

発音を取り上げるのは今回で2回目ですね

ancor di piùのancorで最後の母音aが脱落していることについて土肥篤先生に教えていただきます。

 

音シリーズ第二弾!

まあ、専門の関係で僕がきちんと解説できるのってこの辺が限界なので第三弾があるかは怪しいんですけど。ともかく、イタリア語を読んでいると、語末の音が消えているのはしばしば目にしますよね。今回はこうした音の脱落が二種類(+α)あることと、その区別がイタリア語でどう書く(綴る)か、すなわち正書法(ortografia)と関係していることを見てみたいと思います。

二種類の現象というのは、イタリア語でelisionetroncamentoと呼ばれているものです。日本語の定訳がないようなので、それぞれカタカナでエリジオントロンカメントと呼んでおきます。今回のancorはトロンカメントなのですが、説明の都合上先にエリジオンを見てみることにします。

 

エリジオン

エリジオンというのは、語末の母音が母音で始まる語の前で抜け落ちる現象のことです。一般に「語末の音が消える」と言った時、だいたい無意識にこちらが想定されているような気がしますね。代表選手は、やはり定冠詞でしょうか。母音で始まる語の前では、l’universitàのように母音が抜け落ちますよね。エリジオンは定冠詞のようにほとんど義務的に起こるケースと義務的でないケース(たとえば、mi ha dettoに対してm’ha detto)がありますが、現代イタリア語では使われなくなっていく傾向にあります。定冠詞ですら、特に長めの単語の前ではたまにエリジオンを起こしていないことがありますね。気をつけて探してみるといいかもしれません。

さて、正書法の観点からみると、エリジオンはアポストロフィ(apostrofo)をつけて示すのがルールになっています。上のl’universitàもそうだし、m’ha dettoのように義務的でない場合にもそうです。一方で今回のancorを見てみると、アポストロフィがついていませんね。これは、トロンカメントにはアポストロフィをつけないというルールだからなのです。

 

トロンカメント

エリジオンとトロンカメントの違いは、アポストロフィの有無だけではありません。今回のancorを見てみてると、次にくる単語はdiで、子音で始まっていますよね。トロンカメントは、次にくる音は関係ないのです。これはそもそも語末の発音というのはアクセントがついていない限り弱くなりがちで、それ自体が落ちやすいことと関係しているようにも思えます。

といってもこの点についてはもう一つ知っておきたいことがあって、実はトロンカメントという現象自体が一様でないということです。エリジオンがかなり特定された現象のことを指しているのに対して、トロンカメントはしばしば「エリジオン以外の、語末の音が消える現象」くらいのかなり広い範囲を指すのに使われます。たとえば、トロンカメントは今回のancorのように最後の母音が落ちるだけではなく、santoに対してSan Lorenzoのように最後の音節全体が落ちてしまう現象なんかも含みます。ちなみにトロンカメントもエリジオンと同様、ここ50年くらいで起こる頻度の減ってきている現象であると言われています。

こうして見ると「エリジオンにだけアポストロフィをつける」というのがより適切な正書法の記述であるという気がしますね。ところで、エリジオンでない、すなわちトロンカメントなのに慣習的にアポストロフィをつける表現がごく少数ですが存在しています。おそらく最もよく見るのが、pocoがトロンカメントしたun po’ですね。この語は次の音に関係なく音が消失するし(文末でさえも消失しますね)、母音だけでなく音節co全体が消失しているので、エリジオンではなくトロンカメントです。にもかかわらず、アポストロフィをつけることになっています。正書法というのはあくまでも人が決めた規範なので、こういうことも起こりますね。他にもあるので、よければ考えてみてください!

 

[+α]複合的なものとしての大学システム

私(田中)は、今回引用した記事自体を非常に興味深いものとして読みました。これまで大学ランキングというような格付けにどれほどの意味があるのか実感としてよくわかっていなかったのですが、今回の「私たち(=イタリア)の国の大学の40%が上位100以内には入っている」という分析に接して初めて、なるほどその見方は重要だなとハッとさせられたのです。

この記事にある、大学格付けの分析を行ったイタリアの研究者たちによれば、従来の大学ランキングの指標はイタリアに不利に働く傾向にある、と言います。理由は「それらの指標は個別の大学のみを評価対象とし、複合的なものとしての大学システムは評価の対象となっていないから」(perché valutano le singole università e non il sistema universitario nel suo complesso)とあります。国によって国内における諸大学のあり方が違う、というのは当然と言えば当然かもしれませんが、見落としがちな観点ですよね。

言うまでもなく学問研究は個人や個別の大学で完結するものではありません。この種のランキングを見れば、ともすれば「東大・京大は何位なんだ?」「日本の最高位は中国に抜かれてしまったのか。それは問題だ」といった点だけに注目しがちな自分を反省した次第です。(田中)

 

 

Image by Irén Nemess from Pixabay

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