Race Week(F1×English)

びっくりするseeの用法/Kimiがepicなpodiumをsecureした話(回顧)

・こんなふうにも使うのか〈see O do〉

・Kimiがepicなpodiumをsecureした話

 

今回はF1公式アカウントのTweetから。

2文目を詳しく見ていこう。

This suspension failure during qualifying for the 2006 Bahrain Grand Prix saw him start last, but he would go on to secure an epic podium finish!

(Formula 1のツイート, November 26, 2020)

[訳]2006年のバーレーンGP予選中のこのサスペンショントラブルによって、キミは最後尾からスタートする羽目になったが、最終的に伝説的な表彰台フィニッシュを決めることになった!

 

このsee。ちょっと英語に自信があるという人にとっては特に珍しくない用法だと思うのだが、こんな文脈でも使うのか……とびっくり。『新英和中辞典』(研究社)の語義を引用する。

〈ある時代・場所が〉〈事件・事態などを〉生じさせる, 〈ある時代・場所で〉〈事件・事態などが〉起こる(witness)

英和辞典を見る限りこの語義しか当てはまらない。しかし疑問が2つ残る。ここでの主語は「ある時代・場所」ではないが、いいのか。そして、この意味でも〈see O do〉の形がとれるのか。これも「知覚動詞」なのか。まあ、あえて大仰な言い方をしている、ということなのかな。

そうなのだろう。This suspension failure…saw him start lastは「このサスペンショントラブルによって彼は最後尾からスタートすることになった」としか解釈しえないのだから。

文の後半。go on to doは「続いて~する、~することになる」という意味の熟語。secureは「~を(苦労して)手に入れる」。epicは口語、というかむしろこの手のメディアで頻繁に使われる語で、英英辞典には「very great and impressive」とあってわかりやすい。要は「これは本当にすごい!」「(いい意味で)ヤバい!」というときに使うわけだが、epicは元々は「叙事詩」の意味だ。lyricの対義語である。This is epic!なんてよく聞けれど、「これは叙事詩だ!」と言っているのだ。epicの代表はホメロスの『オデュッセイア』や『イリアス』である。

podiumはF1(に限らず順位を競う競技)ファンなら耳にたこができるほど聞くけれど、そうでない人にとっては意外と聞きなれない語、かもしれない。「F1英語検定試験」があれば、その初級の試験に出てくるレベルの語彙だが、たとえば東京大学の受験生でもpodiumを知らない人がいてもさほど意外でない。知っていてもまずは「演壇」という意味でだろうか。政治家が演説するときに前に立つあの「壇」のことだが、F1のコンテクストではもちろん「表彰台」のこと。

(November 27, 2020)

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