Grammatica+  上級へのイタリア語

[第48回]比較級における「ラテン語の遺産」/コロナ劇的改善でホワイトゾーン拡大①

イタリアの事情にある程度通じている方ならすでにご存じのように、イタリアではコロナ感染拡大防止のために「ゾーン措置」という方法が取られています。規制の度合によって、レッド>オレンジ>イエロー>ホワイトと色分けするユニークなもので、こちらの在イタリア日本大使館のホームページ(https://www.it.emb-japan.go.jp/itpr_ja/covid_19_misureGAR.html)などからも、どの州がどの色になっているか確認できます。

イタリアでは劇的にコロナ収束が進んでいるのを受けて、6月14日からトレント、ロンバルディア、ラツィオなどが、21日からはヴァッレ・ダオスタ以外の全州がホワイトゾーンになりました。このことを報じるla Repubblicaの記事で、「どのような条件を満たせばホワイトゾーンになるのか」が説明されています。

Come ormai noto per entrare in zona bianca bisogna avere un numero di casi per 100mila abitanti inferiore a 50 per tre settimane di seguito.

la Repubblica, 11 Giugno 2021)

すでに周知のように、ホワイトゾーンとなるためには、住民10万人当たりの感染者数が3週間連続で50人を下回る必要がある。

*di seguito: 連続で、継続して

 

さて、今回は比較を取り上げてみます!

英語では通常の比較級と区別される形で「ラテン比較級」というものがあり、inferior, superior, junior, seniorなどは比較対象を示すのにthanではなくtoを使うといったルールがありました。イタリア語ではどうなのでしょうか?

 

ラテン語の遺産の一つですね

「Aと比べてよりBである(よりBでない)」という表現ですよね。イタリア語ではcomparativoと言います。比較級はふつう、たとえば次のように表現されますね。ポイントは、Bにあたる形容詞(alto)の前にpiùまたはmenoがつくことと、Aにあたる比較先がdi(またはche)で導入されることですね。

Gianni è più alto di Alessandro.
ジャンニはアレッサンドロより背が高い。

こうしてみると、今回の文に出てくるinferioreの特徴は、これら比較級の一般的な性質を全く共有していないことですね。比較級であるにも関わらずpiùやmenoがつかず、比較先はdiでもcheでもなくaで導入されます。まあこれはまさに英語の対応する表現と同様に「ラテン比較級」だからなのですが、もう少し詳しく見てみます。

 

「統合的(sintetico)な」比較級の生き残り

più/menoを使った比較級というのは、単語そのものの形を変えるのではなくて別の単語を使うという点で、第38回でも出てきた分析的(analitico)な形です。第38回では動詞の活用について、語尾によって表す統合的(sintetico)な形がラテン語の特徴であるのに対して、分析的な特徴は新しい(すなわち、イタリア語的な)特徴であるということを見ましたよね。同じことが、形容詞の比較級にも言えます。ラテン語では、比較級は形容詞の語尾を変化させて、統合的な形で表されていました。時間の流れと共に、イタリア語では同じ概念を分析的な形を使って表すように変化していったのですね。

動詞の活用に統合的なものが残っているのと同じように、形容詞の比較級にもラテン語的な、すなわち統合的な特徴を持ったものが残っています。たとえば、形容詞buonoに対して比較級miglioreとか、grandeに対してmaggioreみたいな、全く形が変わってしまうタイプの比較級ですね。これらの比較級は語自体の意味として「より〜である」という比較級の概念を内包しています。実はこの比較の意味は語尾の-ore部分にあって、統合的な形なんですね。ちなみに、元の形容詞と全く形が変わってしまっているのは、ラテン語の時代からすでにそうであったようです。

今回の文に出てくるinferioreをはじめとした一連の表現は、統合的な比較級の生き残りのうち、もう一つのタイプです。この種類の形容詞の特徴は、対応する通常の形容詞が存在しないことですね。もう一つ面白いのは、英語と同様に比較先の要素がdiやcheではなくaで導入されることでしょうか。このタイプの形容詞には、他にanterioreやsuperioreなどがありますね。対応する形容詞が存在しないのはなぜかというと、ラテン語において比較級を作るもとになった語がもはやイタリア語では使われなくなったのに、比較級だけが使われ続けているのですね。Treccani(https://www.treccani.it/enciclopedia/grado-comparativo_%28Enciclopedia-dell%27Italiano%29/)なんかは、これらの表現に対して「化石」fossiliという語を使っています。ちなみに、ラテン語ではこれらの語は前置詞や副詞をもとにして作られていたようです。

ラテン比較級を見ていると、英語におけるラテン語の影響の大きさを感じますよね。一方でイタリア語では、ラテン語とのつながりを感じさせるのと同時に、むしろこの言語がどういう風にラテン語と異なる特徴を持つように変化してきたのかについて考えさせてくれる言葉だと言えるかもしれません。

 

[+α]奏功した「ゾーン措置」

冒頭でも触れたように、イタリアではコロナ感染拡大防止のために、州ごとの感染状況に応じて規制のグラデーションを設定し、それを分かりやすく「レッド>オレンジ>イエロー>ホワイト」と色ごとに表示して国民に提示する方法を取りました。

日本の「緊急事態宣言」「まん延防止等重点措置」「措置なし」より一段階細かい区分けであり、かつどのような条件下でどの色になるのかが明確に規定されている(参照:https://www.it.emb-japan.go.jp/itpr_ja/covid_19_20210114DPCM.html)点も日本とは異なりますよね。

私が勝手に推測するに、規制措置の発令・解除の条件が明確であれば、それだけ市民側も対策を行うモチベーションを持ちやすい、そして維持しやすいですよね。そういう意味では(遠い外国から眺めていただけではありますが)、イタリアの「ゾーン措置」は感染症対策としてはまっとうなものだったのではないかと思います(事実、ワクチン接種と合わせて功を奏して感染者数の着実に減少につながっていますしね)。(田中)

Image by Faby Green from Pixabay

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