Grammatica+  上級へのイタリア語

[第21回]分格のneと非対格構文/ウォンバットのうんちはなぜ四角いか

さて、今回は第17回に登場した「非対格構文」の第2弾です。記事はタイトルにある通り。まず次の文を読んでみてください。

Per chi non ne ha mai visto uno, i vombati sono una famiglia ― ne esistono diverse specie ― che somigliano a grosse marmotte.

Il Post, 5 Febbraio 2021)

ウォンバットを見たことがないという人のために(説明すれば)、ウォンバットとは、大型のマーモットに似た属 ― その属にはさまざまな種類が存在する ― である。

Image by Jeremie Barnier from Pixabay

 

2つneが出てきます

が、それを伴う動詞はそれぞれ他動詞と自動詞です。用法が違いそうですね。

 

ふわっと理解でなんとなく使えちゃうne

イタリア語が上手な人ほど感覚で掴めていて問題なく使えてしまう印象ですが、せっかくなのでまずは今回の文における用法をきちんと見てみましょう。片方は自動詞、もう片方は他動詞と使われているというのは素晴らしい観察ですね。なんですけど、実はこの二つの ne、同じ用法です

まず、ne というのは代名詞(pronome)ですよね。何かの代わりに使われているわけです。neには場所を表す用法もあって実は歴史的にはこちらが本来の用法だったり、動詞の補語をまるまる受けたりするわけですが、今回の文に出てくる二つの ne はそのどちらでもないですね。というのも、ne が表しているものがなんなのかを考えてみると、どちらも名詞句の一部をなしている di+名詞(uno dei vombati、diverse specie di vombati)です。今回の ne の用法でポイントなのは、どちらも数量を表す語(uno、diverse)を伴っていることですね。こうした、数量を表す名詞句の一部を受ける ne のことを分格の ne(ne partitivo)と言います。

さて、まさに国光くんが観察してくれた通り、同じ分格の ne が自動詞と他動詞の構文に現れていますね。これは、この用法の ne が構文を全く気にしないからでしょうか。代名詞だし、名詞句の一部を抜き出してくるのだから、自動詞とか他動詞とか関係なくない?という気もしますよね。

この予測が正しくないことは、次の文を観察してみるとわかります(以下、例文は全てSalvi & Vanelli 2004: 57からとってきています)。

Posso contare su molti amici. → *Ne posso contare su molti.
(私は)たくさんの友達を頼ることができる。

Molti attori arrivano domani. → *Molti ne arrivano domani.
たくさんの俳優が明日到着する。(アステリスクは言えない文です)

分格のneはdi+名詞をなんでもかんでも抜き出せるわけではなく、主語になっていたり前置詞を伴ったりする名詞句の一部に対して使うことはできません。直接目的語にしか使えないのです。

いやでも今回の文のne、自動詞esistereの主語の一部を受けてるじゃないか…となるわけですね。まあタイトルでネタバレしてるのですが、これは非対格構文だからなのですね。非対格構文の特徴は主語が動詞の直後に置かれたとき、その主語が直接目的語であるかのように振る舞うことでした。分格のneを使えることは、非対格構文の主語が持つ直接目的語っぽい特徴の一つなのですね。

さて、分格のneは非対格構文について、もう一つ重要なことを教えてくれます。全ての自動詞が非対格構文をとるわけではないということですね。自動詞ならどれでも、特別なニュアンスを伴うことなく主語を動詞の直後に持ってくることができます。でも、動詞の直後にある主語に対してneを使うことができるケースとそうでないケースがあるのです。非対格というのは主語が直接目的語っぽい振る舞いをすることを指すのだから、後者は実は非対格構文ではないのですね。

Sono arrivati molti attori. → Ne sono arrivati molti.
たくさんの俳優が到着した。

Qui hanno passeggiato molti attori. → *Qui ne hanno passeggiato molti.
ここではたくさんの俳優が散歩した。

主語に対してneを使うことのできる動詞、すなわち非対格の構文をとる自動詞のことを、非対格動詞(verbi inaccusativi)と言ったりします。自動詞は、非対格動詞とそうでない動詞に分かれるのですね。ちなみに、この後者だけを指して「自動詞」verbi intransitiviであると言うことがあるので、イタリア語で書かれた文法書を読む時は注意したいですね。

 

【+α】ウォンバットのうんちはなぜ四角いのか

さて、タイトルにこれ見よがしに入れた「ウォンバットのうんちはなぜ四角いのか」問題、実際に気になる人も多いと思います(私も気になりました)。ウォンバットがいかにして自分の排泄物をキューブ状にしているのか、そしてそれはなぜなのかに関する仮説について、今回取り上げた記事から一部を引用し、和訳をつけてみました。(田中)

①どうやって四角くするのか

I ricercatori hanno dissezionato tre vombati comuni (tutti morti in incidenti stradali) e ne hanno analizzato gli intestini per creare un modello matematico che simulasse come i tessuti intestinali dei vombati si espandono e si contraggono durante la digestione. In due tratti degli intestini dei vombati ci sono due scanalature e lì le pareti intestinali sono più rigide – «in modo simile agli elastici» ha spiegato David Hu, uno degli autori dell’articolo. Queste parti dell’intestino si contraggono più velocemente delle parti più molli. Per questo, mentre nell’intestino degli altri mammiferi i futuri escrementi vengono modellati in modo uniforme in tutte le direzioni, nelle budella dei vombati le contrazioni sono irregolari e creano feci spigolose.

研究者たちはありふれたウォンバット3匹(全て交通事故で死んでいたもの)を解剖し、それらの腸を分析した。これによって、ウォンバットの腸内組織が消化を行う際、どのように拡張・収縮するかをシミュレーションする数学モデルを設計するのである。ウォンバットの腸の2カ所に2本の溝があり、そこにある腸壁は(他より)固くできている–「ゴムに似た感じだ」とその論文の著者の一人であるデイビッド・フーは説明した。腸のこの部分は、より柔らかい部分と比べ、より速く収縮する。このため、他の哺乳類の腸内では後に排泄されるものが全方向に均一に形成されるのに対し、ウォンバットの腸内では収縮が不規則で、それが角ばった排泄物を作るのである。

②なぜ四角くするのか

Secondo Hu, potrebbe essere una capacità utile a marcare il territorio in modo più efficace: i vombati usano le feci per segnalare la loro presenza agli altri vombati, e per questo spesso le fanno in punti sopraelevati, come delle rocce.

それが最も効果的にテリトリーを目立たせるのに便利な特性なのかもしれない、とフー氏は言う。ウォンバットは自身の存在を他のウォンバットに知らせるためにふんを使うのであり、そのために彼らはより高い位置(例えば岩場)でふんをするのである。

 

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