2020年シーズンが終わった。さすがに12月半ばまでシーズンが続くと寂しさもそれほどでもない。
今日は最終戦のリカルドについての記事から。リカルドはルノーでのラストレースとなる最終戦アブダビGPを完璧な形で走り切ってみせましたね。さすがです。ぱちぱち。
Daniel Ricciardo capped off a two-year stint with Renault with a strong drive to seventh place in the Abu Dhabi Grand Prix, even taking a final fastest lap bonus point of the year to sign off his time with the team he joined back in 2019 in style.
(F1公式、13 December 2020)
[訳]ダニエル・リカルドはアブダビGPで7位に入る力強い走行を見せ、ルノーとの2年間のスティントを終えた。今年最後のファステストラップのボーナスポイントも獲得し、2019年に加わったこのチーム(=ルノー)との期間を有終の美で締めくくった。
cap offとsign offという2つの句動詞がほぼ同じ意味で使われている。文脈から意味は推測しやすく、どちらも「~を終える、締めくくる」の意だ。このcapは「帽子;キャップ」を表すのと同じ語の動詞で、「帽子・キャップをかぶせる」→「終わらせる、おしまいにする」というイメージ。「ルミナス英和辞典」にはこうある。
[主に新聞で]〈一連の出来事〉の最後を飾る、〈…〉を締めくくる
報道記事と親和性が高いボキャブラリーのようだ。sign offの方は、初め私は「契約を満了する」という意味かと思った。signと見るとすぐに「契約」のことが思い浮かぶし、リカルドとルノーの契約が終わるという事実とも合致するし、実際辞書を引くとその意味が載っている。とはいえここではhis time with…という目的語があるから、より一般的に「終える」くらいに解釈しておくのが良さそう。辞書を引くsign offという表現は第一に、
to end a letter
と定義されている(オックスフォード現代英英辞典)。つまり、手紙本文をつらつらと書いていって末尾に自分の名前を書いて手紙を締めくくる、という具体的な行為を指しているのだ。同じ辞書に次の例文が載っている。
She signed off with ‘Yours, Janet’.
そこから、署名によって締めくくられるその他の行為(仕事・雇用の契約)の完了を指すようになり、それ以外にも何らかの活動の完了を広く指すようになったのだろう。
それからstint。前回、F1(やその他一部のスポーツ)ファンにとってはおなじみの言葉なのに一般的な英単語としてはハイレベルに感じられる語の例としてpodium(表彰台)を挙げたが、このstintも同様だ。ところで、もしF1に詳しくない人と一緒にF1中継を見ていると仮定して、「stintって何?」と聞かれたら、すんなり答えられるだろうか。意味するところはごくシンプルなのに、いざ説明するとなると意外と難しくて、簡単に言うと「F1の現行ルールでは、各ドライバーはレース中に必ず一度はタイヤセット(4つ全部)を交換し、かつ最低2種類(レースごとに3種の硬さのタイヤが用意される)のタイヤを履く義務がある。タイヤ交換のタイミングで全体の周回数を区分けし、「スタート→最初のタイヤ交換」をfirst stint、「最初のタイヤ交換→2回目のタイヤ交換」をsecond stint、……のように言う」みたいになって全然簡単に言えないのだが、しかもこれはあくまでF1での使われ方で、同じカーレースでも、同一車を3人で乗りつなぐ耐久レースとかだと、stintは一人のドライバーが走行を開始して次のドライバーに乗り継ぐまでの周回を指すのだが。それはともかく、F1の実況中継ではおなじみの語である。それを踏まえ、この記事ではその語をより一般的な意味で使っているのである。再びオックスフォード現代英英辞典を引こう。
stint: a period of time that you spend working somewhere or doing a particular activity
(どこかで働くのに費やす期間、あるいは何か特定の活動を行うのに費やす期間)
ここではまさにこの通りの意味で使われている。
元記事はこちらから↓
P5 for the @RenaultF1Team, P5 for @danielricciardo 💪#AbuDhabiGP 🇦🇪 #F1 https://t.co/ffxdElhjka
— Formula 1 (@F1) December 13, 2020